
ゴールの瞬間は、特別すぎるものでした。
2017年12月。私たちhoaloha challenge(チーム名:ホアロハチャレンジ)は、ハワイ・ホノルルのカピオラニパークで、ホノルルマラソン10Kmのゴールテープを切りました。
込み上げるものが多すぎて、みんな笑顔と涙まみれになっていました。
けれど、その瞬間は突然やってきたわけではありません。
今回の旅は、ただ「ホノルルマラソン10Kmに参加する」ことだけが目的ではありませんでした。
日々のリハビリ、仲間との時間、「行ってみたい」「挑戦してみたい」という気持ち。
一歩ずつ、一歩ずつ積み重ねてきたものの先に、このゴールの景色がありました。

第1章 なぜホノルルマラソンだったのか
みなさん、はじめまして。現在20歳の重症心身障害者の母・みきです。
この挑戦の始まりは、我が子が小学校3年生の頃に「卒業旅行で、同級生のみんなでハワイに行けたらいいね」といった思い付きから始まった旅でした。
重症心身障害児と家族が海外へ行くことは、決して簡単なことではありません。最初は、夢のような話でした。
それでも重症心身障害児を育てる私は何度もハワイ経験があり、みんなで行くことに「できない理由」を探すのではなく、「どうすれば同級生との卒業旅行を実現できるか」を考えるようになりました。その積み重ねが、少しずつ夢を現実へと近づけてくれました。
せっかくのハワイ。人生に一度のチャレンジとして、ホノルルマラソン10Kmに加え、ダイヤモンドヘッド登頂も計画に組み込みました。

第2章 準備〜出発〜現地へ
不安だらけの準備がスタート。3年がかりの挑戦
グループでのはじめての海外挑戦。飛行機、食事、トイレ、体調管理……
不安を挙げればキリがありませんでした。
特に長時間のフライトは大きな課題。航空会社に事前相談を重ねました。
確認した事項は以下の通りです。(プライオリティゲストセンターへ各自で問い合わせしました)
・空港内~搭乗口までの車いす・バギーの使用確認
・航空会社貸出用のピロー・ブランケット・固定ベルトの内容確認
・食事の形態内容の確認
・機内でのお手洗いについての確認
座席については、座位保持のための航空会社貸出用のピロー・ブランケット・固定ベルトをお借りし、それぞれが座面補助や、U字クッションなどを用意することにしました。
また、車椅子・バギーを搭乗直前までと、着陸直後に使えるよう手配いただき、機内でのサポートやおむつ交換の方法まで細かく確認。

食事についても、機内食はペースト食や刻み食など、それぞれの子どもに合った形態で準備していただくことにしました。
体調面については、チームドクターにも相談しながら準備を進めます。海外での体調不良や緊急時が一番の不安材料でしたが、事前にチームドクターの診察を受けて相談できていたことは、家族にとっても大きな安心となりました。万が一の場合に備えて、チーム全員が各々に旅行保険にも加入しました。
体力づくりのために、母たちは仲間でキックボクシングのグループレッスンも定期的に受講!
サポーターさんともウォーキングやおんぶの練習を重ね、子どもたちも「ハワイへ行く」という目標を意識しながらリハビリに取り組む日々。
さらには装具屋さんとも相談し、バギーの調整や、身体に合わせた新調も行いました。
準備を進めるほど期待は膨らみますが、その一方で、出発が近づくにつれて不安も大きくなっていきます。
ほとんどの家族が同じ気持ちだったようです。複雑な気持ちが入り混じる中、3年の月日が流れました。
いよいよ出発!
そして、ついに出国の日を迎えました。
集合場所は中部国際空港セントレア。ハワイへ向かうのは夜便です。
だんだんとメンバーが集まると、一気に気持ちが高揚します。

機内では落ち着いて過ごすことができました。機内食については、実際には対応された形態でも食べることが難しかったり、睡眠を優先したメンバーもいました。
機内でのおむつ交換は、持参したシートやブランケットを床に敷き、目隠しをしていただいた上で行うことができました。
出発前の事前練習が本人たちだけでなく、家族やサポーターさんの安心にもつながっていたと思います。本当に長い時間をかけて準備してきた甲斐がありました。
ハワイ到着
そして、いよいよ着陸。
12月の真冬の日本から常夏のハワイへ。
暖かい空気、ハワイ独特の香りに、一気にテンションも上がりました。
移動は事前に手配したADA(Americans with Disabilities Act:障害を持つアメリカ人法)対応のシャトルバスでスムーズに。(Roberts Hawaii社)

準備と仲間の存在があれば、思っていた以上に世界が広がることがうれしくなりました。
もちろん、笑顔じゃないわけがありません。
第3章 マラソン当日に向けて
マラソンの号砲は朝5時です。当日に向けて、現地では翌日から朝活をスタートしました。お揃いのTシャツで心を一つにして挑みました。初日は朝6時に出発してダイヤモンドヘッドへ。

子どもたちをおんぶして登り始め、途中でいくつか大変な場面もありましたが、朝日がきれいに輝くなか、練習通り無事に登頂!


頂上から見たワイキキの景色は最高でした。「本当にハワイに来たんだ」「本当にみんなで来られたんだ」と、言葉では表せないほど大きな達成感を感じました。

2日目は朝5時にスタート地点までウォーキングで下見。真っ暗な道を歩きながら、いよいよ本番が近づいていることを実感します。
朝食はみんなでパンケーキ。その後はビーチでゆっくりとリハビリの時間を過ごしました。日本では味わえない空気感が、疲れた体と心を優しく癒してくれました。



滞在先はビーチフロントのコンドミニアム。お部屋からは毎日きれいなサンセットを見ることができるだけでなく、キッチンや洗濯機がついていて、暮らすように生活できる環境が、ハワイでの滞在の充実度をさらに高めてくれました。

ワイキキでは多くの人が自然に声をかけてくれて、私たちもこの街に受け入れられているような感覚があり、とても心地よい日々を過ごしていました。
ついに当日
いよいよ当日の朝。朝4時にホテルロビーに集合し、車椅子5台と家族、サポーター総勢20名のホアロハチャレンジの出陣です。
人の多さに圧倒されながらも、高鳴る思いを胸にスタート地点へ向かいます。
そして朝5時、スタートの花火が夜空に響き渡り、歓声とともに、いよいよ10キロの挑戦がスタートしました。

第4章 ゴールから、未来へ
12月のハワイはクリスマスイルミネーションが輝く季節。

私たちはゆっくりとしたペースで、距離を示すフラッグの度に立ち止まり、みんなで写真を撮りながら進みました。
普段多くの車が行き交う広い道路は、思っていた以上に凹凸があり、車いすやバギーが何度も引っかかるほどでした。それでもみんながバラバラにならないようにまとまりながら、声をかけ合い、一緒に進んでいきます。

道のりの途中では、フレンドリーな参加者たちと言葉を交わしたり、目が合って微笑み合ったりと、小さなコミュニケーションが生まれ、それもまた楽しい時間でした。みんなと一緒だと本当にあっという間でした。
ゴールが近づくと、みんなで横一列になってカラカウア通りを進みました。

「ここまで来たんだなぁ」と、ふと気持ちがこみ上げ、涙があふれそうになりました。でもまだ泣かない。最後までみんなで一歩ずつ進みます。
そして、いよいよゴール。
ゴールテープを切り、首にメダルをかけてもらう頃には感情があふれ出し、みんなが泣いたり笑ったり、ハグをして互いを讃え合いました。これ以上のものはないと感じられる、本当に特別な瞬間でした。

ただ、本当に特別だったのはゴールテープを切った瞬間だけではありませんでした。
3年前から思い描いていた夢。不安だらけだった準備期間。仲間と何度も繰り返したシミュレーション。毎日のリハビリやトレーニング。ハワイで見た景色。そして一緒にゴールを目指した時間。
ゴールしたことが特別だったのではなく、そこへ向かう日々そのものが特別だったのだと感じました。あの1週間は、私たちにとって一生忘れられない宝物です。

そして今、「行ってみたい」「挑戦してみたい」と少しでもハワイに興味を持っている方がいたら、私たちはきっとその一歩の力になれると思います。私たちも最初は「みんなで行けたらいいね」という、漠然とした思いから始まった卒業記念の挑戦の旅でした。
チームhoaloha challenge では、2027年のホノルルマラソンに挑戦する新しい仲間を募集しています!
詳細はInstagramアカウント@2027_hoaloha_challengeよりご確認ください。
