「ててとて旅行舎」を運営するTry Angleでは、医療的ケア児とその家族が旅行や外出をより楽しめるよう、サポート方法や現場の工夫を学ぶための勉強会を定期開催しています。
2025年3月23日、第5回 医療的ケア児と家族の旅行・外出支援に関する勉強会 「旅先でのアクシデント、どう対応した?」を開催。医ケア児のママで、お出かけ経験が多数ある荻野志保さんをゲストにお迎えし、旅先のアクシデントへの対応を含め、沢山のご経験談をシェアいただきました。
なお、今回の勉強会は、医療的ケア児のご家族を代表する意見としてではなく、経験談を元に、医療的ケア児との旅行について考える機会となるよう実施しました。
あと少しで…?

上の日本地図は医療的ケアの必要な娘さんが、ご家族と一緒に今まで行ったことのある場所です。黄色は観光や宿泊をした所、ピンクは通った所だそうです。あと少しで全国制覇!
四万十川でのカヌーを体験したり、大阪に車で出かけたり、北海道を10日間かけて周遊、東北を周遊するなど沢山のチャレンジをご紹介いただきました。
アクシデント、どう対応した?

最初のエピソードは東京から長崎までの旅について。親族のご葬儀で、急遽東京から長崎まで行くことに。急なことで準備も十分にできない中、予約していたフェリーが台風で欠航になり、車で2日かけて向かったそうです。
大変なご経験でしたが、この予定外のできごとがあったからこそ、「案外行ける!」という自信に繋がったのだとか。休憩のため何箇所もサービスエリアに寄って、その土地の物を楽しみながらの旅となったので、その後の周遊を楽しむきっかけにもなったそうです。
また、旅ではよくある「忘れ物」についても伺いました。東北周遊の際、医療機器のバッテリーを充電する機械を家に忘れて出てしまい、気付いたのは東北道を走っている車の中!旅行は10日間の予定だけど、このままでは1日半しかバッテリーが持たないため、取りに戻るしかないという状況…。そこで、機転を効かせた荻野さんは機械を購入したメーカーの方に連絡し、旅の道中にある仙台の倉庫に在庫があることを確認!無事に購入し、旅を続けることができた、というお話を伺いました。その後は「誰が何を準備するのか」という役割を明確にし、出かける直前の持ち物チェックも行うようになったとお話いただきました。
娘さんとのおでかけのきっかけ
旅行経験の豊富な荻野さんですが、娘さんに医療的ケアが必要となってから、それまでの生活が180度変わり「きっと今後旅行はできないだろう」と感じたそうです。そんな荻野さんが、娘さんと一緒におでかけをするきっかけとなったできごとをお話いただきました。
娘さんは4か月の入院を経て在宅生活へ。多くの医療的ケアが必要なため「私がちゃんと見ていないとこの子の命を守れない」と、洗濯を干すタイミングも分からないくらいの生活。退院後の2ヵ月程宿泊型の親子入園を経験できたことで、その後の生活に少し心の余裕は出たそうですが、家族でのお出かけは月に一度近所のお寺に行く程度で、娘さんと2人で外に出ることはなかったそうです。
そんなとき、訪問看護師さんからの「練習しましょう」「やってみましょう」という提案で、一緒に家の周りの住宅街を10分ほど散歩をすることに。外でのケアに不安を感じられたそうですが、訪問看護師さんに吸引のタイミング等のアドバイスをもらいながら、一緒に練習されました。不安に思ってばかりではなくチャレンジしていくことを思い出したきっかけでもあり、娘さんとのお出かけの最初の一歩だったそうです。
今までの旅行を振り返って、「何かあったらどうしよう」と思っていることも、「行ったからこそ分かる、行ってみないと何が課題なのかも分からなかった」とご経験からアドバイスいただきました。
また、旅行は防災訓練にも繋がります。非日常での対応の経験値を積めるため、楽しい旅の中でこそ、家でない場所の生活を経験してみることも必要なのかもしれません。
参加者の感想
アンケートでは、「怖がらずにアクシデントも楽しむつもりで行けばいいよねって思い出しました」「旅慣れたご家族にも最初の一歩があったことをリアルに知れたことが私にとっては良い気づきになりました」といった声が寄せられました。
今後の予定
勉強会では、医療的ケア児者の旅行や外出に関する情報を、業種や所属を超えて共有を行っていただける「医療的ケア児の旅行支援ネットワーク」についてご案内しています。
今後の勉強会開催のお知らせは、ててとて旅行舎ホームページの「イベント」欄に掲載しています。
ぜひ参加をご検討ください!
https://tetetote-travel.jp/event
※本勉強会は、「赤い羽根 ポスト・コロナ社会に向けた福祉活動応援キャンペーン 重症児等とその家族に対する支援活動応援助成」を受けて実施しています。キャンペーンにご寄付をくださった皆さまへ心から御礼申し上げます。
