「ててとて旅行舎」を運営するTry Angleでは、医療的ケア児とその家族が旅行や外出をより楽しめるよう、サポート方法や現場の工夫を学ぶための勉強会を定期開催しています。
第3回は、金沢の旅館「由屋るる犀々」の藤橋由希子さんと、医療的ケア児のご家族である竹原涼さんをゲストにお迎えしました。
勉強会の冒頭、藤橋さんには医療的ケア児のご家族を初めて宿に迎えた経験を、竹原さんには医療的ケア児のご家族として宿泊先を探した経験を、共有していただきました。それを受けて問い合わせや予約の際、どのような説明や確認事項があると双方にとってより良いコミュニケーションができるのかを、クロストーク形式で考えました。
なお、今回の勉強会は、宿側、医療的ケア児のご家族を代表する意見としてではなく、互いの経験を元にコミュニケーションのあり方を考えるものとして実施しました。
それぞれのエピソード共有からスタート
まずはじめに、竹原さんには宿との予約の際のやり取りで医療的ケアのあるお子さんの宿泊を受け入れてもらえず、ショックを受けたというエピソードを伺いました。

藤橋さんには、初めて医療的ケア児のご家族を受け入れされたときのエピソードを伺いました。特にミキサー食の提供は初めてのご経験でしたが、お食事をペースト状にしようとミキサーを用意してみたそうです。ただ、少量だとイメージしていたペースト状の形状にはならなかった…等の気づきも。
また、入浴についても、タオルを多めに準備。実際には入浴ではなく体制のサポートにクッションのように使われていたご様子をチェックアウトされた後に気づき、予めどのように利用をされたいのか、もっとお話をしておけば良かった!と振り返ってお話くださいました。
ミキサー食対応や和室へのバギーの持ち込み、どう伝える?
先ほどの藤橋さんのミキサー食のエピソードに関連して、参加者の方から「持参したミキサーの食事会場への持ち込みを断られる」との話題が上がりました。宿側がミキサーの持ち込みに難色を示す背景には「食品衛生の観点」や「使用時の音の大きさ」、そして他のお客様への影響を考えたり、経験が無いとイメージができないことなので不安になってしまうのではないか、という視点をいただきました。
それに対して、ご家族側は、できるだけ具体的に「ミキサーは大体〇秒くらい使用する」「ミキサーを使いたいので電源タップに近い席にしてほしい」「いつも自分たちでやっているから任せてもらって大丈夫」等といったことを、できるだけ深刻そうにではなくサラッとリクエストすれば良いのではないかというご意見もいただきました。
次に竹原さんからは、バギーを畳のある和室に持ち込むことについて、なかなか宿側から了承を得られないといった悩みが挙がりました。
これに関しては、藤橋さんからタイルカーペットを利用したご経験を伺いました。予約の際には「畳が痛まないようにするので大丈夫」といったことを伝えると、受け入れる宿側への配慮も伝わります。
お互いにどこに不安や懸念を感じているのか、コミュニケーションしながら考えることが大事
これらのように、ご家族が、今までの経験があることや、宿のことを考慮した対応策を持っていることを伝えることで、受け入れる宿側の安心感につながり、受け入れの可能性も広がるかもしれません。
相手が何に不安を感じているのか、どうすればその不安を解消できるのかを想像しながら、対話を通してお互いに歩み寄るコミュニケーションが必要なのだと感じました。
最後に、Try Angle代表の須田より、宿泊時コミュニケーションシートの紹介がありました。宿とのコミュニケーションに焦点をあてて、考えや情報を整理するシートです。ててとて旅行舎のホームページからダウンロードも可能です。
https://tetetote-travel.jp/archives/column/107
参加者の感想
アンケートでは、「受け入れる側を知った伝え方を工夫するテクニックも大切だと知りました。」「具体的に利用する側、される側のリアルな声をたくさん届けていただき、今後の利用に向けて参考になるヒントをたくさん頂き勉強になりました。」といった声が寄せられました。
今後の予定
勉強会では、医療的ケア児者の旅行や外出に関する情報を、業種や所属を超えて共有を行っていただける「医療的ケア児の旅行支援ネットワーク」についてご案内しています。
今後の勉強会開催のお知らせは、ててとて旅行舎ホームページの「イベント」欄に掲載しています。
ぜひ参加をご検討ください!
https://tetetote-travel.jp/event
※本勉強会は、「赤い羽根 ポスト・コロナ社会に向けた福祉活動応援キャンペーン 重症児等とその家族に対する支援活動応援助成」を受けて実施しています。キャンペーンにご寄付をくださった皆さまへ心から御礼申し上げます。
