
人気の観光地・鎌倉に、ちょっと変わった、でも最高に温かいお宿があります。
お出迎えしてくれるのは、なんと自作の甲冑を身にまとった鎌倉武士!
今回は、「侍ゲストハウス彩(いろどり)鎌倉」のオーナーである「武士」こと、高野朋也さんに、宿に込めた想いや、鎌倉でのユニバーサルな旅の楽しみ方について、ててとて旅行舎がお話を伺いました。

福祉の世界への入り口と、一人の少年との出会い
富山県の山奥で生まれ育った高野さん。
ニューヨークの大学院で英語教育を学んだ後、日本で英語教材のベンチャー企業を立ち上げるなど、多彩な経歴を持っています。
そんな彼が福祉の世界へ足を踏み入れたのは、認知症のグループホームでの仕事がきっかけでした。
入居者の方々は認知症を理由に、これまで行ってきた家事などをさせてもらえず、ご飯を食べたりカラオケをしたりする日々。退屈そうに過ごしているように見えた高野さんは、あえておばあちゃんたちにいろんなことを教わる姿勢で関わりを深めていきました。
すると車いすのおばあちゃんが立って動き始めたり、にんじんの千切りをしだしたり……。役割を生み出すことで、入居者同士もお互いの名前で呼び合うようになり、ただの入居者ではなく、お互いを認識し合う「コミュニティ」へと変わっていく面白さを体感したそうです。
そんな高野さんにとっての大きな出来事がありました。それが、人工呼吸器をつけた重度障害の男子高校生との出会いです。
彼とは障害者の人と一緒に街を歩き、ユニバーサルマップを作るNPO活動の中で知り合い、意気投合。首から下は動かないけれど、知的障害もなく、わずかに動く指先でパソコンのカーソルを動かし、動画を作ったり、ボーカロイドを踊らせたりする様子を目の当たりにして、「こんなスーパーマン、初めて会った!」と驚いたそうです。
そんな彼から、ある日悩みを打ち明けられました。
「特別支援学校に通う彼は、周りのクラスメイトとは話が合わず、話すとしたら先生たち。家に帰ってもヘルパーさんや看護師さん、お医者さんしかいない。本当は大学に行きたいけど、特別支援学校だと協調性やリハビリしか教えてもらえない。このまま行くと永遠の孤独だ、って相談されたんです」
悩む彼のために、高野さんは特別支援学校から定時制の普通高校への転校をサポートしました。
安全面や設備面を理由に7つの学校から断られながらも、8校目でようやく受け入れ先を見つけたそうです。

完璧なバリアフリーよりも「助け合える現場」を
高野さんが「侍ゲストハウス彩」で目指しているのは、設備が整ったバリアフリー空間を作ることではありません。
「旅って“自分のいるところから出ること”。マイノリティの人って、同じグループで集まりがちだし、それをサポートする人も専門職が多くて。専門職とのマンツーマンの関係は大事なんだけど、それだけになっちゃう。だから、もっと繋がりを作ってあげることが必要だと思うんです」
そんな想いもあり、ゲストハウスの宿泊客は一緒に朝食をとることが定番となっているそう。同じ食卓を囲んで、高野さんの手作りご飯をみんなで食べる時間を大切にしています。

「ユニバーサルルームに入って他のお客さんと交わらないのではなく、車いすの人や目の見えない人が来ても、みんなでサポートし合って、いろんな人が関われる現場をその場で作るほうが面白い、と思ってこの宿をはじめました」と高野さん。


武士さんと巡る、ディープで優しい鎌倉アクティビティ
鎌倉を訪れたら、鎌倉ならではのアクティビティを体験するのもおすすめです。
「侍ゲストハウス彩」では、自作の甲冑を着た高野さんに、鎌倉の街を案内してもらうユニークなオプション体験があります。



歩いて行ける距離にある海や、昔ながらの雰囲気が残る鎌倉市農協連即売所など、鎌倉ならではのスポットを満喫できます。
嚥下障害などがある方との食事では、地元飲食店に食事をペースト状にして提供してもらうお願いも一緒にしてくださいます。事情を伝えて相談すると、大抵のお店は快く協力してくれるそうです。
「共感」が育つ場所を、鎌倉のゲストハウスから
「自分のいる場所(=コンフォートゾーン)から出ると、新しい人や価値観に出会える」という想いのもと、観光や福祉、子どもの居場所など様々な人が出会い、交錯する場を作っている高野さんのもとには、日々海外の方、同性愛者の方、車いすの方など様々な方が訪れています。
最後に、高野さんにこんな街になったらいいなと思う姿はありますか、と伺いました。
「鎌倉って、歩ける距離に海も川も山もあって、いろんな活動ができるんです。そんな中に、障害者手帳を持っていたり、性的マイノリティとか、いろんな異なる背景を持つ人が暮らしてます。鎌倉で生まれてきた子どもたちが、希望を持って育っていけるようにしていきたいですね」

「そのためには、違う背景を持つ人たちのことを、違うものだとジャッジするのではなくて、いろんな関わりの中で“この手のない人はどういう生活をしているんだろう”とか”外国人の人はどう考えているんだろう”と想像する力、つまり『エンパシー(共感)』が育つ場を、この鎌倉という場の繋がりのなかで作っていきたいですね」と笑顔で教えてくれました。

「一晩だけでも一生の友達になるような関わりを作りたい」という言葉の通り、ここには誰もが素の自分でいられる懐の深さがあります。
あなたも鎌倉へ行くときは、ぜひ「侍ゲストハウス彩 鎌倉」を訪れてみませんか?
きっと、最高に温かい武士さんと、忘れられない出会いが待っているはずです。

