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レポート

REPORT

こんにちは!医療的ケア児母の石川県民「ゆか」と申します。

現在開催中の大阪・関西万博。

世界中のたくさんの国から、その文化、歴史から最新技術まで、多くのものを多くの方が紹介しに来てくださっています。

正直なところ、海外旅行に行きたいと思っても、医療的ケア児を連れてのそれはとてもとてもハードルが高いもの。

医療や衛生面の不安もあるし、うちの子のように、時間経過とともに残量が減っていく酸素ボンベを使ったりしている場合はなおさらです。

でも、だからこそ。

日本の中で、様々な国の人と出会い、多彩な文化を一気に体感できる万博は、医療的ケア児にとっても絶好のチャンス!

娘にそんな経験をさせたいという一心で(…ウソです、母親の私も経験したいし世界の料理も食べたいしで。笑)、石川県金沢市から弾丸日帰り2人旅で万博に行ってきました。

予約について

万博は、日に日に入場者が増えているそうです。

本格的に暑くなったり梅雨入りしたりする前の少しでも人の少ない日に、と思って5月下旬の平日(夫は行けないのでワンオペ2人旅確定)に行くことに決めましたが、同じように考えている人も多いようで、当日はなかなかに人は多かったです。

パビリオンやイベントの事前予約は3回チャンスがある(2ヶ月前抽選、7日前抽選、3日前先着)のですが、行こうと思い立ったのは1ヶ月ちょっと前だったので、2ヶ月前抽選は間に合わず。

それでも7日前抽選で子どもに人気の電力館、3日前先着でシグネチャーパビリオン「いのちの遊び場クラゲ館」の予約必須エリアを、どちらも車いす枠で予約することができました。

(いのちの遊び場クラゲ館は予約の要らないエリアもあります。カラフルで可愛く、楽器で遊べたりもするのでオススメです!)

車いす枠は対象となる人が少ないので、抽選も先着も比較的予約が取りやすいのではと思いました。

当日、会場入りしてからも、枠に空きがあればスマホや専用の機械で予約することができます。

ただ、途中での医ケアやオムツ交換も必要になりますし、予約を増やすとそれに縛られて動きづらくもなってしまうので、日帰りで滞在時間も限られていた我が家はそれ以上の予約は取りませんでした。

会場はとても広く、移動にもそれなりに時間がかかるので、スケジュールは余裕を持って考えておいた方が良いと思います。

その他準備したこと

入場ゲートや予約したパビリオンでは、チケットのQRコードを読み込んでもらう必要があります。

混雑しているとネットにつながりにくくて表示されないこともあるので、スクリーンショットや紙に印刷したものがあると良いそうです。

写真をあちこちで撮ったら、スクショを出すのにも時間がかかってきそうだなと思ったので、娘と2人分を紙に印刷し、透明カードケースの表裏からそれぞれ見えるように入れておきました。

会場内のマップも必要ですが、いちいちスマホで出すのもバッテリーが心配。

有志の方が公式よりもわかりやすいマップ画像を公開してくれているので、それを印刷して持っていきました。

つじ@万博さんのX→https://x.com/t_tsuji

中でも「うちわ版」が優れもので、バギーを押しながらでも片手で取り出してサッと見れるのでオススメです!

会場はとても広い(ディズニーランド3個分あるとか…)ので、むやみやたらに動くと時間も体力もどんどん無くなっていきます。
行きたいパビリオンは前もって場所を調べて、移動の動線を考えておくと良いと思います。

5月下旬、真夏ほどではないけどそれなりに暑いものと思って、モバイルファンや携帯氷のうなどの暑さ対策グッズを準備していました。
ただ、海に面した立地のため、特に夜は海風で肌寒く感じることもあるとか。
我が家は夜になる前に帰ったので、海風の寒さを感じることはありませんでしたが、パビリオンによっては冷房が強めのところもあり(もしかしたらお国柄が出るところかも)、薄手の上着やガーゼケットなどで調節しました。

会場内は無料の給水スポットやボトル洗浄機があるとのことでしたが、それを探したり、場合によっては並んで待ったりに貴重な時間を割くのもなぁと思い、水のペットボトルとお湯の水筒(娘の食事用)を持ち込みました。

注意点は、持ち込めるペットボトルは未開封のものに限られることと、瓶や缶飲料(エネーボなどの栄養剤や缶ミルクは除く)は持ち込み禁止なこと、水筒は係員さんの前で中身を一口飲んで見せて、安全なものだと確認してもらう必要があること。

私の水筒の中身は熱湯だったので、危うく口をヤケドしそうになりました(笑)が、無事に入場ゲートを通過できました。
会場内には自販機もたくさんあり、中で買うこともできます。

また、ニュースでは虫が多いとも聞いていて、一応虫よけも用意していましたが、私たちがいる中では取り立てて虫よけを使うまでもなかった印象でした。

虫が発生しやすい水辺には行かず、夕暮れ前に帰ったからでもあるとは思いますが、過度に恐れる必要は無いかなと思います。

いざ万博会場へ

私たちは金沢から向かったので、

  • 金沢駅〜敦賀駅:北陸新幹線
  • 敦賀駅〜大阪駅:特急サンダーバード
  • 大阪駅〜弁天町駅:JR環状線
  • 弁天町駅〜夢洲駅:大阪メトロ中央線

と乗り換えて行きました。

JRは前もって介助をお願いしていたので、弁天町駅に着くまでの乗り換えは係員さんの案内でとってもスムーズ。

弁天町駅も、大勢が万博に行くために乗り換える駅なので、メトロへの案内導線はかなり分かりやすくなっていました。

ホームは多くの人でごった返していましたが、万博のために増発された「子ども専用列車(障害のある人も利用可能)」がすぐに来て乗ることができました。

ただその子ども専用列車も、遠足で行く子どもたちが多かったりでほぼ満員。でも先に乗っていた方が「車いすの子が乗りたいみたいよ!もうちょっと詰めて!」と声をかけてくださって、バギーの前側を持ち上げるように乗せてくれました。

今回、他の場面でもこういう対応をしてくれる方がいらっしゃり、大阪という土地柄の温かさ、フレンドリーさも感じました。

夢洲駅を出ると、万博会場の東ゲートが目の前にあります。

入場待ちの列にはかなりの人が並んでいましたが、車いす連れは端の優先ゲートからすんなり入ることができました。

目の前に立つ大屋根リングに、ついに来たんだ!と感動。

食事は時間をずらすのがオススメ

入場したのは10時半ごろ。

会場内には、各パビリオンに併設されたもの以外にもいくつも飲食店がありますが、お昼はどこも大混雑だと聞いていたので11時前に入ってしまおうと考えて、目をつけていたアフリカ料理のレストランを目指しました。

その道中も、せっかくなら大屋根リング上からの景色を見たいので、エレベーターで上へ。そこには圧巻の景色が広がっていました。
パビリオンはどれもこれも特色のある建築で、その周りにいる人々は髪の色も目の色も服装もさまざま。まさに「小さな世界」でした。

レストランは狙い通りその時間はまだ空いていて料理もすぐに出てきましたが、娘の注入と自分の昼食を終えて出るころには満席&レジには外まで続く列。
注入の時間が決まっていたりすると難しさもあるかと思いますが、可能ならご飯の時間はずらした方がスムーズです。

パビリオンへ

まず最初に行きたかったのは台湾の企業パビリオン「TECH WORLD」

展示の内容に興味があったのはもちろんですが、入口で渡されるスマートデバイスを手首に着けて展示を見て体験していくことで、どこの部分で心拍数が上がった(=心が動いた)かを最後に教えてくれるらしく、言葉を話さない娘の心の動きを知りたかったというのも理由の一つでした。

パビリオン前に着くと、既に多くの方が列に並んでいましたが、スタッフさんに声をかけてみたところ、障害者手帳を確認の上ですぐ次の回に入れていただけることになりました。

中では、ICチップの生産大国である台湾だからこそのテクノロジーを駆使した展示の数々を見ることができます。

タブレットに表示された蝶をタップすると上のスクリーンに飛び立っていく仕掛けや、絵だと思ったら実は精細なスクリーンで、中の人が動いたり(もはやハリー・ポッターの世界のよう)、あちこち興味深く見た後で、いざスマートデバイスの結果へ。

娘は、蝶が飛んだライフゾーンに一番反応が出ていました。

その結果から台湾のオススメスポットも教えてくれるのですが、表示された「工芸の旅」という文字には、もの作りが好きな私自身の血を感じて思わず笑ってしまいました。

海外パビリオンではその他、サウジアラビア館、アラブ首長国連邦(UAE)館、マレーシア館に行きました。

アラブの2ヶ国、何となく文化は似た感じなのかなと思っていましたが、パビリオンの造りも展示内容も注目ポイントも全然違う!マレーシア館では国内各地の食文化の紹介があり、確かに和食でも関東と関西で味や食材は違うし、北海道と沖縄となればなおさら違うのと同じように、マレーシア料理の中でも各地の特色が浮き出てくるということを身近に感じました。

知ることの大事さと、手の届くところに現地の人と文化の紹介が来てくれているありがたさを実感しました。私が。
娘は寝たり起きたりしていたけど、それでも感じるものはきっとあったはず…!!

予約していた「いのちの遊び場クラゲ館」の地下「いのちの根っこ」は、明るくにぎやかな予約不要エリアとはうってかわって、真っ暗で静かな中にいろいろな音が聞こえてくる演出から始まりました。
(暗いところが苦手な子、声が出る子には、真っ暗にならず音を出してもOKの「ワイワイぺちゃくちゃ枠」もあります)

その後は360°スクリーンに映る色とりどりのクラゲと遊んだり、世界の「祭り」の映像と生演奏の中で踊り歩いたり(マップうちわは踊るのにも役立ちました!笑)。スタッフ側にも車いすの方がいらっしゃり、ウィリーしながらともに踊っていました。

電力館はタマゴ型のデバイスを一人一つ持って入り、そのタマゴに電力を集める体験型パビリオンです。

タマゴは中でのストーリーやゲームに合わせていろいろな色に光ったり振動したりするので、バギーっ子にも楽しみやすそう!というのが行きたかった理由で、実際いろんなゲームで楽しみながら電気についての勉強にもなって面白かったです。

ただしタマゴは一人一つなので、自分で遊ぼうとするわけではない娘と一緒だと一人で二人分のゲームプレイをする必要があり、結構頑張りました。笑

ラストはとっても綺麗で感動的でした!

パビリオン以外でも楽しめる

とにかく広い万博会場では、歩いていると途中でパフォーマンスに行き会うことも

私たちが行った日も、TECH WORLD前では台湾から来日したユニットの大道芸ショーをやっていたり、イエメンのナショナルデーだということで現地の歌と踊りのショーがあったりしました。

ナショナルデーはほぼ毎日それぞれ違う国や地域に割り当てられているので、毎日のようにその日だけのイベントが行われています。

今回は行けませんでしたが、会場の外周を回る電気バスで大屋根リングの下を通ったり(手帳を持っている人は無料で乗れます)、大きなスライムを触って遊んだり的に投げたりできる「遊んでい館?」という施設なども面白そうだなと思います。

ご飯を食べられる子なら、世界の各地の料理を実際に食べられるのも良い経験になるかなと思います。SNSでは「世界各国の料理を、日本の衛生基準で食べられるのが万博の醍醐味」と書いている方がいて、なるほど!と思いました。

会場のバリアフリー状況

今回行ったところも全てそうでしたが、海外パビリオンは車いすユーザーに優しいところが多く、あまり待たずに優先して入れてくれたりします。
(特にサウジアラビア館なんて、行列を横から眺めてただけの私たちに、「どうぞー」と向こうから声をかけてくれてノンストップで入れるという、並んでる方々にちょっと申し訳なくなるくらいの神対応!)

混み具合や他の要因によって、必ずしもそういう対応をしてくれるというわけではないと思いますし、あくまで「してもらって当然」ではなく「していただけてありがたい」というサービスですが、「外で長く待つのは体力的に心配」「車いすだと入れるところが限られて楽しめないかも」という理由でためらっている方がいらっしゃったら、ハンデのある子も充分楽しめる環境になっているよ!とお伝えしたいです。

建物は全てユニバーサルデザインガイドラインに準拠して作られていますし、介助用ベッドがある多目的トイレも至るところにあるので、車いすでも安心して回ることができます。

興奮しやすい子やパニックになりやすい子にも、カームダウン/クールダウンルームが場内に8ヶ所あるそうですよ!

【万博】大阪・関西万博会場での入場券やバリアフリーについて(大阪観光局)

余談

今回、せっかく万博に行くなら今日こそコレを履くときでしょ!ということで、娘はミャクミャクの靴下を履いていきました。

これが、思っていたより良かったです。万博の会場内はもちろんのこと、途中の駅や電車の中でも「靴下かわいい!」と声をかけていただきました。

よく考えたら街中では、足の甲にミャクミャクの絵がある靴下を見る機会なんてあまりありません。歩かないので靴をあまり履かない&バギーに高さがあって、足が人の目に付きやすい位置に来る娘だからこそ気づいてもらえたんだなと思いつつ、そうやって好意的に声をかけてもらえること、ミャクミャクに愛着を持っている方が多いことに「万博開催中の大阪」を感じる出来事でした。

正直、もっと行きたい!

滞在した時間めいっぱい楽しみ、良い思い出になりましたが、行きたかったけど諦めたパビリオンも数々。

大阪近郊に住んでいたら、きっと私は通期パスを買って何度も娘を連れて行くと思います。私が興味を惹かれるからだけでなく、娘も目を見開いていろいろ感じようとしていたのが見え取れたし、医療的ケアや障害のある子もウェルカムな場所だなとも感じたから。

大いに刺激を受けた娘は、学校でも先生に話を振られてご機嫌だったとか。

今年の10月までしかない万博期間、ぜひ皆さんも楽しんでみてください!

情報協力

ゆか

石川県金沢市在住の一児の母です。娘は小学5年生で、酸素療法、胃ろう、吸引、吸入、導尿、夜間呼吸器が必要な重症心身障害児。移動はバギー型車いすを使っています。在宅で生活し始めた頃は車で10分の距離でも外出が怖くて引きこもってたのに、今や電車を乗り継いで2人で万博に行っちゃうチャレンジャーに成長しました!笑

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